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91.11.28（木） ＩＳＴＡＮＢＵＬ
本日は自由行動。 めざすは旧市街地のモスク群である。
まずガラタ橋まで坂道を降りていく。イスタンブールは坂の街だ。階段の道路や街角のヴィスタなどイタリアの山岳都市などと同様なかなかいいものだがあいにくの雨模様。残念だ。
パンを売るＣＡＦＥ、ミルクの屋台、果物屋、その他店を開けたばかりの電気屋、単板屋、サイン屋等が並ぶいわゆるガラタ地区の朝の風景の中を進む。
しかし車が無規制で雨でもあり道は汚く、ゆっくり歩ける所ではない。 車道はスロープ、歩道は階段である。
ガラタ橋は上下２段に分れており、上が車（歩道はあり）、下がレストラン通りとなっている。それぞれの段から釣りをしている人が目についた。覗いてみれば小さなジャコのようなものだ。
この有名なガラタ橋に沿って、すぐ横に跳ね橋が組込まれた新橋ができていた。これは興ざめ。
街を歩けば、イスタンブールも車問題に悩まされているのはすぐわかるが、余りにも無造作で軽薄な計画ではないか。と少し憤慨しながら橋を渡る。
（旧ガラタ橋は跳ね橋ではないのでそのうち取壊されるのかも知れない）
旧市街地はいくつかの丘の上にまたがって形成されている。そしてその丘の上に主要なモスクが建設されている。ガラタ橋からの眺めはかつてのアクロポリスにあるモスク群を見渡す格好のアングルなのだが、あいにくの雨で曇って見えない。
我々はまず橋のたもとにあるイェニ・ジャーミ - YENI CAMII - に入る。 新しいモスクと言う意味だが、堂々としたモスクである。と言うより、どんな小さなモスクでも堂々としていると言うべきか。
イェニ・ジャーミはプランがおもしろい。 側廊、背廊と呼ぶべきではないかも知れないが、トップにドームをいただく一室大空間に従属するべく空間が周囲に付随している。
光に溢れるであろう主室に比べ、闇に潜む空間とでも言えるか。 そのため、空間に深みが生じより中央にせり上がる空間構成が生きてくるように感じた。その闇の部分は女性の礼拝のための場所にあてられているそうだ。女性は中央の光に満ちるであろう場所に座を設定する事はできない。イスラムの制度である。
ここでも堂の中心には何もない。
スルタン・アフメット・ジャーミで述べた事はイスタンブールのモスク共通のものだ。 もちろん静寂な中庭はある。 中心に泉、周囲に回廊を配する他のモスク同様の造りであるが、平面の分割数（中心軸を通すために奇数分割。３か５が多い。）、中央泉の上屋のデザインの違いでそれぞれのモスクが識別される。
イタリアなどで見かけるキリスト教教会の中庭空間は、付属の修道院のものが主であるので、一概に比較できないであろうが、宗教建築物の中庭状空間として見るとその違いは興味深い。ヒューマンな人間のためのキリスト教の中庭に対し、神が宿るもっと神聖な位置づけがイスラム教の中庭にはされているような印象を受けた。
形態の上での特色は明らかにそのドームの反復にある。 キリスト教のルネサンス教会堂ではほとんど一つのドームが中央に据えられるのに対し、イスラムモスクは、大小様々な単位のドームで屋根面のほぼ全域が覆われ、その全てが一つの主室を形づけるための構成に参加している。
どちらも幾何学に忠実な何の乱れもない素晴らしい物である。 神という絶対的なるものに向けて構築しようとするとき、文化圏や時代が変ろうと、その手がかりとするのは純粋幾何形態、それも正方形や円という完全なる物というのはたいへん興味深い。
それではイスラム建築特有のあの装飾的な文様に覆い尽された表面は何と言えばいいのか。 スルタン・アフメット・ジャーミも、このイェニ・ジャーミもタイルや色プラスター、あるいは石や木の彫込で空白がないと言えるまで装飾されている。
後で見る事となるが、この態度は特に神や王の建物に限らず、一般住戸に対しても同じなのである。神や王に対する賛美と言うだけでは説明しきれない。
もちろんそれもあるだろうが、自分はイスラム教徒であると言う事の表明と受取る方が理解しやすいように思われる。 キリスト教では十字架やマリア像に当る物が偶像禁止のイスラム教に取ってはこの文様と言うわけだ。正解かどうかわからないが今の所、こう理解しておこう。
それにしてもスルタン・アフメット・ジャーミもそうであったが、イスタンブールのモスクの大理石はとても美しい。 ヴェニスのサンタマリア・ディ・ミラコリにも匹敵する物だ。
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