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91.12.02(月) FEZ つづき
途中で皮の工房に立寄る。BALI には中央南北方向に川 - PONT DE BEINE MDOUN - が流れているがその川沿いに工房が集っている。川と言うより下水と言った方が的確なものだ。 ( BALI は大工街、工芸職人街、そして皮屋街と言ったように、職業によって地区が分れている。職住近接の街と言ったところか) 皮工房はなんとも言えぬ悪臭。事前にミントの葉を渡されたのだが、ここでその意味に気づく。その葉を鼻に当てながらの見学。 臭いだけではなく作業環境は最悪の状態だ。陽の当らない暗い所で若い連中が作業をしている。すぐにでも病気になるのではないかと思うくらいだ。(ひょっとすればアフリカでは陽の当らない方が良好な環境なのかも知れない)
工房の屋上に上がれた。屋根も土だ。 メディナの屋根空間の体験は昼食を取ったレストランでの方が刺激的だ。DAR TAJINE という名でカデール・モスク - SIDI ABD EL KADER - 付近にある。

このレストランは比較的大きな住戸を改造したらしく、中央に装飾に埋ったパティオがあり、周囲に部屋が並ぶというメディナの一般住戸と同様なプランである。(後に確認する事になる) このメディナのまっただ中の屋上から眺める風景は素晴らしいものだ。 冬の温暖な日には屋上は住民のテラス空間にもなっているようで、人々の姿が見える。屋根伝いにどこまでも行ける人工の丘のようだ。
ここからみればランドマークとしてのモスクのミナレットは、住民の信仰の象徴に見える。 各々の家にはなるほど中央に中庭空間が見える。厳しい夏の陽射しを知らない私には、この屋上空間は快適で、都市空間に応用できそうな気がした。洗濯物などで賑やかであるが、まさに生き生きとした生活が営まれている集住体を見る思いだ。

イスラム教という宗教を媒体とした共同体、それを他の侵略から守ろうとする姿勢、そしてアフリカの風土、それらを考慮にいれたほぼ完璧とまで言える計画ではないだろうか。だからこそ、建設されてから15世紀もの間、街の骨格を変える事無く、延々と生活が営まれているのだ。

突然だが、原研究室によれば地中海地域の集落は
1.並列した住居群と突出した施設
2.地形
3.上二つによる配列の明快性
これら三つの要素で風景が形づけられると言う。
なるほどそう言われれば、いままで見てきたどの都市のメディナもこの3要素はすぐに抽出できる。 ほとんどの街が緩やかな丘陵地に水平方向に展開され、モスクの緑の瓦屋根やミナレットが文字通り突出している。そして水平方向に展開される様は、パティオを内包した単位の集合であり、アフリカの強い陽射しがその集合を迷路的に複雑にしている。又それは建設された時代の社会的背景、つまり、共同体の防御の体制を形づくる事にも役だっている。侵入者は自分の位置もわからないまま、あらゆる方向から攻撃を受ける事になろう。 自然発生的と言うより多分に計画性を感じるものだ。

そこでは家族という単位が重要視されている様に見える。つまり、パティオを内包した単位とは一住戸であり(このコートハウスとでも言える造りにも多分に防御の姿勢が窺われる)、いかにその独立性を保証しながらそれらを集合させるかに意が払われている。 しかし、家族の領域は明確であるが、その集合の領域は不明確である。モスクという突出した施設が集合形式を支配しているようにも見えない。 モデル的に言えば無限に増幅可能な形式とも言えよう。
それでは集合体としての境界を形づくる要因はどこにあるのか。 今回見た事例では地形と言うしかない。 ムーレー・イドリスが典型的で、この FEZ に於いても、BALI が谷、JDID が丘という地形上の境界に街(集合体)の境界が一致している。

BALIの皮工房

 

BALIの屋上風景

 

BALI内部

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Last Update 00.06.17