91.12.08(日) BARCELONA
ホテルで朝食の後、タクシーでコロニアル・グエルの地下聖堂 - CRIPTA DE LA COLONIA GUELL - を訪ねる。 15年前には行けなかったところだ。
高速を飛ばして25分くらいでその異様な生命体のような建物へ着く。 地下聖堂と呼ばれているが、なだらかな傾斜地に建つので部分的に埋っている程度だ。
第一印象は瓦礫の山、あるいはゴミの生物。
アプローチの広場から見れば建設が途中で中断したせいもあろうが、奇妙な生き物のように見えるのだ。その生き物はタコのように足が複雑に絡まり、頭をもちあげてこちらを見ている。
纏っている外皮はレンガに石であるが、成型された規格品には頼らず、破片とでも言える物で積上げられている。要はその辺に転がっている物をむりやりモルタル目地で積上げ、外壁とした感じだ。
内部は瓦礫ではなくレンガも成型材できちんと造られている。
そして素晴らしい。
平面の中央部は数本の柱で囲まれ、祭壇を含み聖域として区別される。 その部分の天井には美しい放射線状のレンガのアーチが掛かっている。 石の柱は傾いているが何の違和感もない。現わにされた構造体と空間とが一体となった、有機的な建築とも言えよう。
祭壇背後には聖歌体のバルコンがあり、美しい声が聖堂に響きわたる。 ちょうど日曜日のミサがあったので一緒に授ったのだ。なんとも綺麗に響く教会堂だ。周囲の大きな目玉のような開口部にはステンドガラス(色ガラス?)がはめ込まれ、あたかも蝶ちょうが一緒に礼拝に参加しているようだ。(ちょうど蝶ちょうの羽の様な開き方をする。)
自己の精神を神に向って開くにふさわしい礼拝堂だ。
ガウディのデザインによる家具も神に仕える信徒のごとく寄添っている。 さして大きくない礼拝堂だが、その感動は SAGRADA FAMILIA
にも匹敵するものだ。
ミサが終り外へ出ると新郎新婦が見えた。結婚シーズンなのだろうか、いろんな教会で結婚式に出くわす。 コルビュジェのロンシャンの次に、建築を志す若い人たちからターゲットにされるのはこの教会かも知れない。
待たせていたタクシーで市内のモンジュイックの丘まで戻る。 結局タクシーは約10,000 PTS(15,000円)支払った。 少々痛い。(当初は鉄道で行く事を考えていたが、列車の本数が少なく、時間の無い観光客はこれくらいの出費は覚悟しないといけない)
地下聖堂でたまたま同行の人に出会い念のためお金を借りたおかげでやっと支払う事ができた。よって手持の金はほとんど無くなり、しばらくひもじい行脚を続ける事になる。
モンジュイックの丘は言うまでもなく’92オリンピックの会場である。
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