91.12.05:Cordoba

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91.12.05(木) SEVILLA、CORDOBA

EXPO’92、安藤さんの日本館より視察が始る。 屋根テフロン、外壁t20〜30mm木板の下見板張り+石綿板(妻)でほぼ建物は完成していたが、思ったより小さい。 木組の大柱も寺院建築などと比べて迫力がなく、少々がっかり。 雑誌に出た模型写真の方がよい。

会場を一巡した後、アルカサールへ向う。 アルカサールとは要塞と王宮が複合された物を言うそうだ。よって城壁で固められている。 内部は随所にパティオ空間があり、今まで見てきたイスラム建築と同様だ。ただ真円のイスラムアーチはモロッコにはなかったのではないだろうか。こちらではよく見かける。
ヒラルダの塔 - TORRE DE LA GIRALDA - へ上がり、街を俯瞰。この塔はかつてはモスクのミナレットだったがそれを継足し、鐘楼として使っている。ここは階段ではなく、ラセン状のスロープにて上がって行ける。 地図を見てもわかるが、SEVILLA の道路も迷路状である。しかしスケールが1ランク上がり、車が通る事でメディナに比べれば空間が一面的だ。しかし、一つ一つの建物が主張できる余地が残されているようにも見える。
屋根は思ったよりフラットが多い。テラスなどに使用して、豊かな都市居住に一役買っているようだ。

大体午前中でSEVILLAを終り、CORDOBAへ向う。この間も約120km、1時間半ほどの距離だ。 昼食の後メスキータ - MEZQUITA - に入る。 英語で MOSQUE CATHEDRAL と言うらしいが、イスラム教のモスクにキリスト教教会堂が挿入されているのだ。4期にわたって建設され、ほぼ正方形平面をもつモスクの中央部分をキリスト教教会に改造したと言うのだ。(モスクの建設は8世紀に始り、キリスト教会は14世紀くらいから始ったようだ)

モPlan参照

これは面白い、そして凄い。
オレンジが植えられた中庭を通り過ぎ入口をくぐると、真っ暗の中、わずかな自然光と効果的な人工照明により、上下2段に掛かる赤と白のゼブラ模様のイスラムアーチが浮び上がっている。そしてそのアーチの掛かる軸は建物の一方向のみで、何枚も何枚も軸が重なり並列している。その軸の直行方向は、フラットに、(多分その部分はイスラム時代)あるいはボールト(多分キリスト教時代)にて連結されている。
この赤と白のアーチのかかる軸はメッカの方向を指し示すいわば神への軸だ。よってこの神への軸は赤と白のアーチはくぐらないわけであるが、ミフラーブを正面に見据えたとき、金色に輝いた(照明効果でそう見えるのだが)荘厳なアーチを貫通するよう仕組まれている。 何もないが絶対的なるものに支配されている空間だ。 単純であるが、見事な構成だ。

まずこのようなモスクが建設された事に対して驚く。 自然光の入るわずかな開口部はキリスト教教会建造時の物であろうから、当初このモスクは闇の空間であったに違いない。 赤と白のゼブラアーチが無限に増幅するような闇の空間。その中で蝋燭のような明りの元、大勢の人が集り、ひたすら唯一神アラーに向って祈りを捧げる。ちょうどイスタンブールのモスクで見た女性用の闇の空間で120m角もの平面全てが覆われていたのだ。
コーランが響きわたる中、蝋燭の明りはゆらぎながら、時たま人の顔や赤白のアーチを浮び上がらせる。考えただけでぞくっとさせられる。

今まで入れなかったが、モロッコのモスクと言うのはこのような空間ではなかったのか。特に光を求めるのではなく、柱が建並ぶだけの一様な空間。人々は堂内でメッカへの軸がわかれば良い。それもミフラーブと呼ばれるニッチとすれば、何もない一様な室があれば良い事となる。
天国への鍵穴であるイスラムアーチも特に定った使い方があるようには思われない。 様々な柱頭があるということは、逆になんでも良かったのではないか。 そんな事は気にしないのだ。 イスタンブールで見たものは、オスマン・トルコ帝国が自らの権力を誇示するがために考え出された特殊な形式なのだ。 そう考えれば外観の違いも説明できるように思われる。

そんな空間の真中にゴチックの様なルネサンスの様な教会堂が周囲にイスラム空間を残して建造された事が次ぎなる驚きである。 レコンキスタと呼ばれるキリスト教徒の国土回復運動(要はイスラム教徒の追放)を考えると、抗争が繰返された時期に、よくぞ寛大な措置を取ったと思わざるを得ない。(SEVILLA のヒラルダの塔も同様だ)
礼拝堂にはきちんとファサードが付けられており、二重構造とでも言うか、常にイスラム、キリスト、二つの様式が垣間みられるのだ。 自然光に溢れる礼拝堂と、闇のモスクと言った対比も面白い。 今もキリスト教教会として実際に使われているらしい。

ここのミフラーブは豪華だ。黄色はガラスに金箔、赤は宝石、緑と青はセラミックで造られ(ガイドによると)、モザイク状に壁面を飾っている。 興奮が冷めやらぬ内にバスでグラナダ - GRANADA - へ移動する。 CORDOBA から更に約120km、1時間半の距離だ。途中の休憩地で夕食用のサンドウィッチ類を買込み、ホテルで食べる。

ヒラルダの塔より
手前はカテドラル

 

Mezquita内部

 

 

Mezquita
ミフラーブ前の
神の軸が貫通するアーチ

 

 

Mezquita
ミフラーブ前の天井

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Last Update 00.06.19