22.12:師走を迎えて寒くなりました。色々お気をつけください。

162mの解体

世界貿易センタービル
1970年竣工、40階建、高さ162m、その解体の様子が先日テレビで放映されており、興味深く見てました。
施工は鹿島建設さん。

https://www.kajima.co.jp/tech/wtc_kaitai/index.html

詳しくは鹿島さんのホームページを参照いただくとして、この工法を簡単に言いますと
1。前段階として仕上げ類は先に撤去されて躯体状態(はだか)になっている。
2。建物の中に搬出用のスラブ開口(概ね9×12m)を各階開けておく。(大きさは正確ではありません)
3。床にカッターを入れ概ねスパン割に合わせて大きさをカットし、建物外に添わせたクレーンで吊り上げ搬出開口より地上に下ろす。
このカッター入れが新技術の「鹿島スラッシュカット工法」と言うらしく床を斜めに切り取ることで落下を防ぐ。これはスマートです。
また梁なども含めたユニットとしてカットラインが設計がされてる(ようだ)。
4。床を切り取った後は外壁側に残ったキャットウオーク状の床と外壁を一体でカットし同じように吊り下げて地上に下ろす。
5。それを繰り返し1階ごと下がっていく。

外周には鉢巻のように2層ほどのスライド足場が組まれており、転落防止や飛散防止など、安全性や作業性が図られた最上階での作業となる。
各階2500m2/フロア、それを5日で1サイクル(1層分)の工程が組まれたそうだ。
ぐしゃぐしゃっとした解体風景が全くなく整然としてクリーンな印象はまさに最先端と頷けました。

話を少し転換して
超高層ビルの最後はどうなるんだろうか、と以前から疑問と心配があった。
竣工当時日本一の高さを誇ったこのビルは数えて51年の役割を終えた。
50年を超えれば建物の登録文化財の候補となりうるが、このビルに保存運動の声が上がったとは聞かない。
当時の最先端技術といってももう古く、また日本一の高さなどの謳い文句も他に越されてしまえばもう価値がないと言うことだろうか。しかしいつまでこう言う考え方が続くのか、とも思う。
木造の古民家などで明らかなように50年を超えて生き残っていくのはごく僅かであり、維持管理できなければ壊される。さらにその壊す経済力がなければ空き家になる理屈だが、もし超高層ビルが空き家になったらどうなる?
考えるだけで怖いですが、壊す費用は古民家などの比にならない。いつまで企業や我々の社会はそういう体力が維持できるのか。
新しい建築が生まれるとワクワクしますが、造るときに壊すことまで考えておくことが大切だと大いに感じました。昨今の建築ブームがこのことも含めてより成熟した成果につながって欲しいと思います。

*本年も最終月となりました。昨今建築が話題になることが多く、設計デザイン、建設、施工、マネージメント、コミュニケーション等々、若い世代の大きな力を感じます。新鮮な感覚と知力によってますます建築を魅力的にしていってほしい。
今年も読んでいただきありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
22.12.01
23.06.01:大きさの寸法が違うようですので文面修正しました。他の数字も合わせて上掲のホームページ等でご確認いただければ幸いです。