19.04:令和になりましたね
片山光生(カタヤマミツオ)
春を迎え近鉄奈良駅周辺は人でいっぱいです。
その1画に官庁街があるのをご存知でしょうか?
知っていても所用がなければ人も少なく、周りにお店もないので静かで落ち着いて、三笠山を背景に他の都市とは違って穏やかで独特な空気が流れる穴場的エリアです。
その雰囲気を醸し出す一助となってるのが文化会館と県庁の建築です。建築を学んだ人であれば、あー確かにこうだった、と懐かしく教科書を思い出すのではないでしょうか。
どちらもコンクリート打放しで、文化会館は低く抑えられた水平線と中庭プランが陰影深い表情を造り出し、県庁は庇の出を強調したバルコニーが積層された端正な純粋ラーメン構造で、前川さん、丹下さんを彷彿とさせる日本の60年代そのままの印象です。
調べると建築家は京大卒の片山光生(1918〜1985)氏、建設省営繕時代の作品です。
Wikipediaによると当時の営繕は「東大出の連中はセオリーに頼り創造性がない」というチーフの意向により設計チームが形成されたらしい。
この人の名を知らず、前川さん丹下さんが出てくるということが、確かに建築界に東と西の確執あり、と思わせますが、共々で歩んだ時代の大きな動きを思わざるをえません。
コンクリート打放しの表情は修復技術の向上もあり大変綺麗に残っており、かつては「古さ」の典型として評価できなかったのですが、ミニマムな素材で豊かな表情を追求した日本のモダン建築の成果は、今触れると純粋で瑞々しく、残していくべき建築との思いを強くしました。
年代調べ
片山光生(1918〜1985)
奈良文化会館:1968
奈良県庁:1965
前川國男(1905〜1986)
東京文化会館:1961
京都会館:1960
丹下健三(1913〜2005)
香川県庁舎:1958
19.04.01 |