13.11:先月の続きです

懐かしさ

前回弊社が入ってるビルを「レトロ」で書いてたとき藤森先生が「懐かしさ」について書いておられた書籍(「建築とは何か」藤森照信の言葉)を思いだしていました。いまそれを読み返しふむふむと(難しいところは飛ばしながら)うなづいています。
この2,30年で弊社の廻り、つまり大阪の西淀川区はすっかり変わりました。毎日住んでるとなかなか気づかないものですが、たまに久しぶりの方が尋ねてくると決まって「この辺変わりましたねえ」の感想をお聞きします。
確かに変わりました。この辺りは用途地域で言えば第1種住居地域ですが、かつてをご存知であれば西淀川と言えば公害の工業地域。この辺は準工業といいますか、住居と合わせた家内工業を営む建物がほとんどでした。そこが今やマンション、あるいは建て売り住宅に変わり、消費税の絡みか今さらに加速してる感じです。
写真を二つ。

 

別に名建築でもありませんが木造モルタルの家がなくなりここにマンションが建つようです。公告の看板を見ると片廊下のよくある10階建てマンション、推測鉄骨造です。
突然ですが先日のNHK「八重の桜」で、主人公が故郷会津に戻るも、戦で生家の廻りが変わり果て、どこか分からず。でもその辺の敷地内に入って行くとかつての鉄砲訓練場の建物がそのまま残っており、そこで涙(だったかどうか分かりませんが)する場面がありました。
拙い例で恐縮ですが、これが、建築なんだ、と思いました。
そこに変わらず在るからこそ、それが起点となって過去の自分と繋がりある感情が生まれる。共に生き共に老いる感覚もあるように思います。久々の来客の方も弊ビルを見てほっとされたそうです。その「ほっ」の瞬間にその方の過去と現在が繋がったんではないでしょうか。
その建物がそこにあるだけで自分のアイデンテイテイを確認する。建築や都市はやはりそういう役割を担うものだと再確認しました。

13.11.01