■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。 

12.04:二人の芸術家のしごとから

あれから1年

3.11
早いものであれからもう1年が巡りいろんなメデイアでは特別番組や企画が目白押し。その一つと言っていいのかどうか、この日に合わせて始まる宇佐美圭司先生の個展の内覧会へ行ってきました。昔々ちょっとしたご縁を賜りそのおかげで案内が届いたのです。
タイトルは「制動(ブレーキ)大洪水」展。まさしく3.11がテーマの個展です(だと思っていました)


会場は三島の「大岡信ことば館」。意外な会場ですが宇佐美先生の第1回個展の時に大岡氏が詩を寄せたことから、それ以来特別な友のような関係だったらしいです。
展示は2部構成で第一部のメインはタイトル通りの大作群、それに加え第2部では今までの軌跡が紹介されている。
圧巻はやはり第一部。3m角程の大キャンバスに精気が注ぎ込まれた作品には圧倒される。工夫された展示形式の効果も相まって見るものの心を揺さぶり、次から次へと息苦しいまでに襲ってくる。
「ある運動にブレーキがかかることで、そこから新たな展開に向けたエネルギーが生成する」震災と言うよりここ10年ほど先生が取組んできた文明論的な主題なんだそうです。
以前はモチーフである4つの人型群がもっと軽快にグラデーションを描いていたのですが、今回は違います。おどろおどろしく恐怖さえ感じます。
大家の予見的な絵画を眼の前にして圧倒的な衝撃に襲われた内覧会でした。

そしてもう一つ。

篠山紀信氏の「ATOKATA」写真集です。氏のいままでの写真とは全く異なりその驚きとともに後書きが心に刺さります。
「それは神の悪戯でも凄惨な地獄でもなく、静謐で尊く荘厳な風景であった。僕は自然の力に畏怖し、畏敬をもって凝視するしかなかった」
自然の自らの淘汰作用。抗えない大きな力を目の当たりにして改めてまた違った悲しさがこみ上げてきました。

あれから1年、いまだに何かに追い立てられ落着きません。

12.04.04
12.04.24一部追記

*2012.10.19に宇佐美圭司先生が亡くなられたとニュースで知りました。ショックでした、と同時に程度の低い理解で先生のことを書いたことが恥ずかしてしょうがありません。我がオフィスの壁にある先生の絵がかけがえのないものに見えてきました。
なお、偲ぶ会が12.12.11に銀座で行われるそうです。
12.11.08追記