■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。 

10.11:やっと秋になったと思えばもう冬です

白の家

最近とあることで白の家の図面をよく見る事となった。そうあの篠原一男さんの白の家です。正方形平面が微妙なところで2分割されて心柱が見事に象徴化されるも方形屋根は内部には参画しておらず、これが抽象と言うものなのかと思っていた。そして不勉強ゆえこの住宅は特殊な方の特殊な住まいという印象をずっと持っていた。

ところが新建築2008年6月号をみてびっくり。この住宅が最近移転され再築されているのだ。しかも同じクライアントでである。
知らなかった。最近あまり雑誌類を見ない事もあるが知らなかった事を悔やみながら感動も覚えた。
記事によると当初はご夫婦と3人の子供達のために造られたらしい。早々に都市計画道路に掛かる事が判明し取り壊しの運命に会うも計画が進まず、それから40数年を経て今回の移築となったようだ。
その運命的な事も然りであるが私には40数年経て住み手がまた同じ住まいを求めたのに感動した。子供たちはすでに独立し高齢化したご夫婦二人のために、そして現行法規に合わせるため若干の変更があったものの基本的にはオリジナルそのままである。

「こんな空間は住めないのではないか、という批判があることも耳にしましたが、私はこの空間に創造性とこころよい緊張が感じられ・・・」
クライアントの言葉である。

藤本壮介さんも寄稿されている。
「この家は誤解されて来たと思う。ここには篠原さんの優しさが建築空間に満ちている。それはでしゃばらずそっと後ろにたたずんでいる優しさだ。人間の生活を機能性と言う大雑把な方法で処理してしまうのとは反対に生活にまつわる様々なドロドロしたものをすべて黙って受け入れる優しさである(省略して引用してます)」

白の家の建築家は永遠性を求めたいと言った。日常性と永遠性を繋ぐとも。
住宅は基本骨格以外は変化して然るべきと考えていた私にとってこれはショッキングな出来事でした。移築が無くてもこのお二人は改築も増築もせずこの家に住み続けていたのだ。
これが建築家の力量なのかと胸が震えました。

10.11.01
10.11.02一部修正