■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。 

09.10:今月は映画を見て

総合力2

「火天の城」と言う映画を見てきました。テレビなどでいろいろ宣伝された大作なのでご存知の方も多い事でしょう。
物語は織田信長が天下を治める野望のもと西洋の伽藍に似せた吹抜けのある天守閣を安土の地に築こうと言うもので、主役はその命を受ける宮大工の岡部又右衛門と言う実在の人物らしい。

映画はその前例のない巨大工事の企画段階、総棟梁を決める指名コンペテイションから始まる。信長の意中では既に幾多の戦で信頼を置いて来たこの岡部で腹は決まっていたようだが、そこは政りごと、京都と奈良の名門棟梁を交えて3者の指図(さしず)争いとなる。指図とは今の設計図との事で屏風や引き戸など建具を利用したプレゼンテーションに加えて模型が活躍する。スケールが分かりにくいが1/50程度であろうか、精巧に作られしかも演出豊かなプレゼンは3者とも参考になる面白いものだった。
結局その中で唯一吹抜けを作らなかった岡部の案に他2者も信長も負けた格好になったようだ(吹抜けは見たかったが何故なくなったか、詳細はここで書くより映画を見て下さい)

さて次は基本設計実施設計である。当時の宮大工はやはりスーパーマンだったんだろう。一人で事例を調べ構想して図面を引く、それを繰返し積算も行う。まさしく今の私たちの仕事と同じである。しかもしかも彼らは職人としての超一流の技を持つのである。アルチザンとアーキテクト、西洋でも同様の分類過程があるようだが、時代を遡れば一人の人間が全ての役割を担っていた事に改めて驚く。

設計が終わればいよいよ工事である。安土の一つの丘が天守閣を含む小都市になる構想だったらしい。琵琶湖を臨むその地(信長には広く天下を見渡す地であったようです)の選定には全く異論はないと思う程、あれはCGだろうか、上手く出来ていた。
工事中の様子は機械の無い時代のそれが垣間見られたがそう密には映像化されておらず残念。それより映画の主題は人間の和である、人を束ねる棟梁の姿である。建築はいくらスーパーマンでも一人では出来ない、多くの人の力が合わさって実現するものであり、時代は変われどこの事は変わらず全く同感である。
クライマックスは全て組み上がった後で不同沈下がおこり、やむなく命がけで仕入れた木曽檜の大黒柱柱脚を1寸だか切り落すシーンである。
安土城そのものが謎に包まれどこまでが真実なのかが分からないが、随所に純粋に感嘆する場面に溢れ、もっとドキュメンタリー風な作りの方が良かったような気もしました(関係者の方すみません)
まだやってますのでご興味おありの方は是非映画館へどうぞ。

09.10.01