■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

05.02:話題のものを見て来ました

21c美術館

新しい体験だった。
白い光とアートに包まれた非常に心地よい刺激だった。
しかし少しばかりザワザワしたものも感じながら。

年明けて金沢へ行って来ました。
話題の作品を見るのと多少正月気分でのんびりもしようと。
特に調べなくてもこの美術館にはすぐに行ける。JR金沢駅には大きく案内が出ているし兼六園や市役所に隣接したまさに街の中心にある。
バス停からアプローチした第一印象は「思ったより小さい」であった。
エントランスを入ると明るい白い空間が少し頭を押さえられながら広がっている。チケットを購入しさっそく中へ。いつものように展示というより建築を見て回ろうと思っていたのだが・・・

 
左:ショップ付近 右:休憩コーナー

一つの部屋で一人の作家の世界を体験できる。オープニングを飾るだけあって展示物も素晴らしいのだろうが、一つに一つがこんなに快適で面白いとは!非常に心地よく引き込まれていく。部屋も広かったり狭かったり、高さもいろんなボリュームがあり、単調にならず変化があり、それぞれにアートがフィットしている。

最初は順路サインに従って歩いたがすぐに慣れて途中から勝手に思いのまま歩ける、つまり自由になる。次の展示に向かうには必ずいったん外へ出る。そこは中庭があったり長い通路であったりで、もちろん室内なんだけど感覚として「外」に出て、空が見えたり周囲の景色が垣間見えたり、またいろんな光が入って来てこれが鑑賞の休憩になるのであろう。「内」は共通して天井全面からコントロールされた光が降り注ぎ、言ってみれば外内全体がいろんな光に包まれた大きなワンルーム、そんな感じだ。迷路のように時たま自分の位置が分からなくなるがそれもイライラに繋がらず、ゲームの中のような平面からは想像もつかない空間であった。
結局設計者の思う壺にはまったのだろう。押し付けられず疲れず自由気ままにアートを鑑賞できる、それが楽しい。 こんな壺なら文句はない。

しかしながら改まってみるとふと建築に感動しない自分に気づくのである。例えば谷口さんの美術館に感じたような感動がないのだ。キュレーターの言うまさしく消された建築を味わった印象と言うか、建築の印象が希薄なのだ。

新しい美術館が出来たんだと確かに思う。非常にたくさんのスタッフが配備され常日頃言われるハードとソフト共に21cに相応しい新しい美術館が出来たんだと。
しかし展示物が変わったり建築の経年変化など、将来にわたってこの素晴らしさが持続できるものなのか?
時の経過とともに重なり合い蓄積されて成熟していく可能性をこの建築は備えているのか?あるいは常に新しいインスタレーションの場や環境となり得るのか?
その辺りが私には判断がつかず少しザワザワと不安になる正体なんだろう。
そんな症状に効く薬のようなご指摘ご意見をお待ちしております。

05.02.01