■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

04.05:少々懐かしく思いながら

わた好き

うちのような事務所でもちょくちょく面接に来てくれる方々がいます。
そういうとき弊社では質問シートが用意してありその第一問は「あなたの好きな建物は何ですか?」です。

この休みに久々に昔のスライドを眺めていました。せっかくの連休なのに寂しい限りですがこれを機に調子の悪いG4のフォーマットやファイル整理など、何とか事務所の整理をしようとした一環なんですが予想通り?整理は進まずいろんな懐かしいものを引っ張り出しただけになってしまいました。
その中に土門拳記念館がありました。

 
84.08.31

冒頭の質問をもし私が受ければこの建物を挙げてしまいます。 もっと近いところにあれば、といつも思うのですがしかしその鮮烈な記憶は忘れようがありません。
スライドに書かれた日付を見れば何ともう20年前です。当時は廻りには何もなく(今はどうでしょうか?)田んぼの中の小さな森というか茂みを目印にアクセスしたのを思い出します。本当にこんなところにあるんだろうか?そんな感じのロケーションでした。
真っ直ぐなアプローチは建物側面へ続いてました。ん?何故池越しのアプローチではないのだろう?今でも疑問ですがそれより背景の小山と静かな水面との狭間で何と静謐な佇まいをしているのか。一種の宗教的精神に繋がるような感覚をも呼び起こすものでした。

谷口さんの作品は初めから好きで、といっても雑誌に出てるだけしか知りませんが、端正で密度の濃い作品造りは常々憧れの対象でした。
形態、素材、空間といった要素が見事に総合化されて一見控えめながら強く強く訴えかけてくるのです。抽象に還元すると言っても一律な素材感のない表層とは異なり、常にそこには形態、素材、空間のせめぎ合いが感じられ、複雑な現代の設備や機能を涼しげに納めてしまい、それはもうその土地から飛翔した質の高いユニバーサルな建物にまでに昇華されている、そんな気がするのです。

今月は私の好きな建物、つまりわた好きを挙げてみました。

04.05.04