■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

03.10:芦原先生がお亡くなりになられました。

芦原先生

新聞で9月24日に芦原先生がお亡くなりになられたと知りました。
あぁ、とはっきり言葉にならない何とも言えない気持ちです。
もう四半世紀以上になりますが私たちの在学時は、芦原研と言えば建築計画系の第一研究室で多くの有名建築家も巣立ち、みんなの憧れの研究室でした。先生は小柄な体格でいらっしゃいましたが声は太く伸びがあり、いつも堂々と大変大きく見え、またいつも温厚で朗らかなジェントルマンの雰囲気をお持ちでした。

個人的に「芦原義信」という建築家に心を動かされたのは京都宝ヶ池国際会議場のコンペ応募案を見たときです。もう、うろ覚えですが、緩やかなカーブの扇状ブロックプランで、その姿は大らかで伸びやかで美しく、建築というのはこんなに人を優しく包むものなんだ、と言うような思いを持ったものでした。

講義ではやはり我々の永遠の教科書とも言える「街並みの美学」にまとめられている内容で、東洋と西洋の比較の中でその空間の骨格や組み立て方を説いていく話は本当に興味が深く示唆に富んだもので、また先生は話の仕方や言葉の使い方がうまく、その内容と相まって我々みんなを虜にしたものでした。

もう何年前になるのか、ちょうど関西国会図書館のコンペの頃でしたが、同窓会があり先生を囲んで話す機会がありました。大体不況の話が多かったのですが、その中で大阪で設計事務所をやってると言うと、すぐ「図書館のコンペはどうだ?」と尋ねられ、「いや我々の事務所の規模ではちょっと大きくてやってません」と答えた時の先生の顔。いつものようにニコニコはされながらもあの顔は「お前、何をそんな情けないことを言っとるんだ!」という半分お叱りの顔でした。そのお顔が忘れられずそして最後になってしまいました。

昨年は稲垣先生、今年は芦原先生と、お年を考えればさもありなんと言うことになりますが、寂しさと共に、改めてもっときちんと学んでおけば良かった、と言う悔いの思いが沸き上がります。読んでいただいてる方の中でもし学生の方がおられたら、やはりちゃんと勉強した方が良いよ、と言いたいです。

03.09.29