■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

03.04:福祉の住宅改修入門と言った体験でした。

福祉入門

先日、豊中市のあるNPO法人の福祉セミナーに同行させていただきました。セミナーの内容は福祉住環境コーディネーター有資格者たちとのワークショップで、実際の住宅改修の実例をもとにそのポイントを探るものでした。
その事例は脳梗塞の方の住宅改修でどちらかと言えば当のご本人のためと言うより介護の奥様のための改修で、簡単に言えば奥様の個室をつくるものでした。
えっ?と思う事例だったんですが、これでこのご家族は救われたそうなんです。

恥ずかしながら今まで私はこのような住宅改修は床の段差をなくしたり、手摺を付けたり、トイレを変えたり、その方の症状に合わせた処理の積み重ねが答えになると思っておりましたのでこの事例は意外でその時はピンとこなかったのですが、福祉の住宅改修とは要は心のケアーであり、その方や介護のご家族の精神を開放する事が最大のテーマになる、との講師の言が非常に印象的で一種の感銘を受けたのです。

要は通常の住宅設計とテーマは何も変わらないのです。
医学や理学の方々が参加するのが通常とは違うところでしょうが、ご本人の症状等の理解だけでは全くもって不十分であり、それはあくまで最低限で、その方やご家族のこれまでの生活や、感覚や精神と言ったものに広く応えていく深く根元的な仕事なのだと気付かされたのです。改修に限らず新築工事においてでも、通常の設計では隠れているもっと深いところでの建築のテーマが浮き上がってくるのを感じました。

しかし現実はそのような理想の改修はまれのようです。
介護認定の人の住宅改修には補助金が付くのですが、その工事内容は先に挙げた手摺や段差処理などに限定されると言った制度の問題や、上辺の知識だけで営業する工務店など、バリアがそこそこあるようですが、結局は入院、治療と言った負担に加えての改修費の問題なんだろうと、何だかため息の出る思いでもあります。

福祉の住宅改修。
福祉住環境コーディネーターの仕事はまだまだこれからなんだなと思う反面、これは建築の問題であり、要は我々の問題なんだとも思わされたセミナーでありました。

03.04.04