■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

02.10:台風はイヤですがやっと秋に突入です。

コミュニケーション

この間何気なく新聞を眺めていると、街中から銭湯が消えていったのを惜しむ投稿が眼に入り、また少しめくると今度はあるケイタイのCMで「会いたくなるケイタイ」と言う意味のフレーズが眼に入ってきました。
ん?会いたくなるケイタイ?

一年前くらいに妙に感心したTVのCMがあります。
それは若い二人が手を繋いでデートするのですが、彼女の方は常にケイタイ片手で反対の手で繋がっている彼より無線の先にいる誰かと始終コミュニケートしているのです。彼の方はしきりに気を引こうとするのですが結局そんな感じのままで駅で別れると言った少し哀しい内容でした。

そう言えばコーヒーのCMで、刑事と若い犯人との取り調べで面と面とで問いつめるよりノートパソコンでのチャットの方で犯人が自供する、つまりより真実に近づくと言ったものもありました。

よく言われるように、現在の特に若い世代の人たちには実際すぐ横に存在するリアルな相手より離れているケイタイの相手の方が、あるいは機械を介在させるバーチャルの方がより繋がりが持てると言った風潮に戸惑ってきたわけですが、ここに来てやはり会うのか、と妙に安心したのです。

そう、それはつまり建築の出番なのです。
建築は優れて人と人とのコミュニケーションをテーマにして成長してきました。
冒頭の銭湯は当初は内風呂を持てない住宅を前提とした都市機能として整備されたのですが、実際は地域の人のコミュニケーションセンターでした。また住宅も大家族、核家族と言った家族の変遷の中で変わってきました。企業の組織のあり方としてのオフィス、先生と生徒の教育の場である学校などなど、時代の変遷に連れて建築が変わってきたのはまさしくコミュニケーションのあり方が変わってきたからでしょう。

ケイタイが放つ圧倒的な力に畏怖を感じてきたのですが、何となく今回のCMはバーチャルなものの敗北宣言のような気もして、建築に携わるのものとして何だか嬉しく、コミュニケーションと言うテーマはやはり生身で考えるべきだと、そんな気がしたのです。

みなさまのご意見お待ちします。

02.10.01