■ MAE today

この欄には当研究所の近況や、今思うことなどを概ね1回/月のペースで気ままに書いていこうと思っています。どうぞお気軽にお読みください。    → MAE board

00.11:再び「建築と社会」誌「建築の眼」よりです。

建設という行為 

街を歩いていてお気に入りの古い建物が、新しく建て替わっているのはショックなものです。
時を重ねた建築物が醸し出すあの柔らかで落ちついた風情は、無くなってさらにその価値を増すもののようです。

それは建設という行為が環境を規定していく行為だからではないでしょうか。 そして環境というものは一夜にして出来上がるものではなく、時と共に、人と共に緩やかに形成されていくものなのです。

例えて言えば建築物は、樹木などの緑と同じなのだと思います。 まず根が張り、葉が繁る樹木を植えなければなりません。 すぐ枯れるようなものをその場しのぎで植えても意味がないのです。 逆にいい苗木でも愛を持って水をやらなければ枯れてしまうかも知れません。
人が時間を掛けて苗木を大木へと成長させ、周辺の環境を支えるようになるのです。

バブル期に建てられたものは残念ながら大木には育たないでしょう。
今、長引く不況の中ではどういうものが造られているのでしょう。
仕事を追い求める意欲が、豊かな大木となる建物に結びつくよう願ってやみません。

「建築と社会」 1999.10号

00.11.01